お子様にピアノを習わせたいと考えた時、真っ先に頭に思い浮かぶのは大手の音楽教室、特にヤマハ音楽教室やカワイ音楽教室だと思います。
しかし、ご近所には自宅でピアノ教室を開いている先生も意外と多い場合もあり、クチコミやインターネットのレビューで良い先生がいるという情報をキャッチすることもあります。
さて、ヤマハ音楽教室と自宅個人ピアノ教室の違いとは何でしょう?そして、どっちを選べば良いのでしょうか?
子供にピアノを習わせる時は、やっぱり大きなところに所属している先生のほうが安心できますよね。
ヤマハと聞くと大手だから安心っていうイメージはあるよね。ところで、ヤマハの先生と自宅でピアノ教室をやっている先生って何が違うか知ってる?
会社に所属しているか、自分でピアノ教室を経営しているかの違いですか?
それもそうなんだけど、実は一言にピアノの先生と言っても色々なタイプの先生に分かれるんだ。その違いからも、自分にピッタリな先生の探し方が分かると思うよ。もう少し詳しく解説してみよう。
実は2タイプある「ヤマハの先生」
ヤマハの先生といっても実は2タイプあって、一つはヤマハ音楽教室の講師としてグループレッスンや個人レッスンをおこなう「ヤマハシステム講師」。もう一つは、ヤマハ音楽教室をやっている楽器店に所属し、ヤマハが開発したピアノスタディという教材を使える資格をもった「PSTA(ピスタ)指導者」として登録されている先生の2タイプがあります。
ヤマハシステム講師はヤマハシステム講師採用試験とグレードと呼ばれるヤマハの音楽検定試験で5級を取得する必要があります。そしてヤマハ音楽教室を受け持つ楽器店に採用されることでヤマハ音楽教室のグループレッスンである「幼児科」などを担当することができ、グループレッスンの傍ら楽器店で募集したピアノやエレクトーンの生徒の個人レッスンも行います。
これに対し、PSTA指導者は個人レッスンのみを受け持ち、ヤマハの教材であるピアノスタディという個人レッスン専用教材を使ってレッスンをおこなうのですが、以前は「ヤマハピアノ教室」という組織だったのが、もっと広く一般の先生にもピアノスタディを使ってレッスンをする先生を増やしたいという方針から、もっと開放的なPSTAという組織に変更されたという背景があります。このため、PSTAの先生は楽器店に所属している「ヤマハの先生」と、楽器店に所属せず自宅などでレッスンを行っているフリーの先生がいますので、「PSTA=全員がヤマハの先生」というわけではありません。
数々の狭き門を突破しないとならないヤマハシステム講師
ヤマハシステム講師になるには実はかなり狭き門を突破しなくてはなりません。
ヤマハ演奏グレード5級と指導グレード5級相当以上の音楽力が必須条件となります。ヤマハグレードは6級までは、いわゆる生徒さんが目指すグレードですが、5級からは一気にレベルが上がり指導者向けの演奏や指導能力が必要となります。ヤマハシステム講師になるには、受験の段階で指導者グレード並みの音楽力がないと難しいといえます。
そして、システム講師採用試験を受け、合格すると約半年間の講師研修を経てヤマハシステム講師になれるのですが、もう一つ重要なのが、所属先の楽器店があるかどうか?ということです。
いくら資格を持っていても働く場所がなければ、講師にはなれません。また、楽器店に配属されても生徒が集まらなければ、グループレッスンを受け持つこともできず、早い段階で講師を辞めてしまう先生も出てくることがあります。
こういった数々の狭き門を経て、ヤマハシステム講師として活動できるようになります。
様々なパターンがあるフリーの自宅ピアノ講師とは
さて、独立して自宅でピアノ教室を経営しているフリーのピアノの先生も沢山います。こういった自宅ピアノ教室ですが
- 元ヤマハやカワイなどに所属していて独立したピアノの先生
- ヤマハやカワイに籍を置きながら自宅でも個人的にピアノ教室を開いているピアノの先生
- 最初から無所属で独立したピアノの先生
といった3パターンに分かれます。
ヤマハ音楽教室などの大手に所属していれば一生安泰かといえば、そういうことではありません。近年の少子化や水泳や英語、新進気鋭のプログラミング教室などの習い事の多様化により、大手だから生徒の数が安定しているという時代は終わりました。そして教室の生徒を募集する方法がお金をかけなくてもいいホームページの登場により、大手からの独立をする先生も増え、フリーの自宅ピアノ教室とはいえ、ヤマハでコンクールに生徒をどんどん出していた先生や、分かりやすさや人柄で人気だった先生も、自宅で教室を開いていることも珍しくありません。
また、大手に所属したことがない先生も、今の時代は高度な指導法をインターネットや著名な先生による講座などで一般の先生でも受講することができ、ホームページで沢山の生徒を集めて豊富なレッスン経験を積んでいる先生も沢山いますので、「ヤマハだから」というメリットが昔ほどではなくなっているのが実状です。
大手の先生を選ぶか?フリーの先生を選ぶか?
このように、ピアノ教室、ピアノの先生といっても所属や使っている教材、経験などでパターンが分かれており、ヤマハの先生だからといって、今の時代は少子化による生徒数減少で誰しもが経験豊富な先生というわけではないため、一概に「大手」「フリー」で単純にピアノ教室を選ぶのも危険です。
ヤマハ音楽教室やカワイ音楽教室の利点は、長年の間に研究されてきたヤマハやカワイの教材を一定水準以上の研修を経て使いこなせる先生に習うことができるということです。このため、指導力については満足の行くレベルの先生も多く、そういう意味では大手という安心感があります。しかし、問題は「先生を選べない」というところです。
ヤマハの場合、曜日や時間、教室によって先生が決まっているため、先生を選ぶということができません。また、先生それぞれのレッスンに対する考え方やコミュニケーションの取り方、何を大切にしているかといった情報は事前に公開されておらず、たった1回の体験教室だけで入会を決めなくてはいけないというハードルがあります。
フリーの自宅ピアノ教室の先生ですと、ホームページを持っている場合、そこにレッスンに対する考え方や教室や先生の雰囲気も確認することができ、事前に自分で調べてから教室を選んで体験教室を受けることができます。
ヤマハやカワイといった大手の場合、その会社の方針が全講師の指導方針として統一されている面が多いですが、フリーの先生は自由にレッスンを組み立て個性を作り出すことができるので、「大手の統一感という安心感」を取るか、「フリーの個性という自由感」を取るか、ということも選択材料の一つだと思います。
そして、いちばん大切なのは「先生とのコミュニケーション」が円滑に取れるかどうかです。
コミュニケーションはその先生の「人柄」「人生経験」「レッスン経験」「個性」などが重要となってきます。レッスンという決められた時間内でコミュニケーションを円滑に取れるということもピアノ教室にとって大切なことで、何を悩んでいるのか?行き詰まっていることはないか?どうしたら成長するか?ということをコミュニケーションを通じて知っていく必要があります。このコミュニケーションが円滑に取れないと、どんなに素晴らしい経歴や指導力があっても、レッスンは行き詰まってしまい長続きしなくなってしまいます。
大手がいいか?フリーがいいか?よりも大切なことは、先生という一人の人間が自分にとってどうか?ということを大切にすることが、自分にピッタリなピアノ教室を見つける秘訣となります。