誰も教えてくれなかったピアノ教室・音楽教室ホントの話

危険な教室

コンクールで有名な先生の無責任な一言で大好きなピアノを辞めた話

ピアノコンクールには他の発表会やコンサートには無い、ホール全体に張り詰めた緊張感があります。
この緊張感は、これから自分の演奏を審査される子供達のものだけではなく、子供の演奏を祈るような気持ちで聴き守る保護者達や、生徒の演奏への評価がそのまま自分の指導力への評価となるピアノの先生、楽器店関係者、調律師、報道関係者、そして審査員。様々な立場の人々が、それぞれの思惑を持ちながら、固唾を飲んで舞台上の子供の演奏に注目する緊張感でもあります。
今回ご紹介するのは、子供にとっては限界ギリギリとも言える緊張感の中で先生が言った無責任な一言から未来を台無しにされた元生徒さんのお話です。

ピアノコンクールでの有名な先生の一言で大好きなピアノを辞めた話

将来はピアニストと大人たちに決められたレールの上で

私は小学生の数年間ではありますが、毎日こどもピアノコンクールの本選で金賞を何年も連続でいただいていました。私が通う音楽教室を運営する楽器店関係者も「お宅の子供さんは将来有望ですね。当然ピアニストを目指すのでしょう?でしたら是非ともグランドピアノで毎日練習させてあげなくては!グランドピアノ買いませんか!?」と親をおだて、裕福な家とはいえない我が家でしたがグランドピアノを購入して毎日、練習に励んでいました。
学校でもコンクール結果は掲示板に貼られ「クラスメイトがこんなに頑張ってますよ!みなさんも頑張りましょう!」という先生たち。それを見たクラスメイトは家に帰って親に報告する。それを報告された親は、私の親に話しかける。「お宅の娘さんは凄いね!将来はピアニストだね!」。
そして、ピアノの調律をお願いしていた調律師も、ピアニストを目指すのならと、ピアニストの先生を紹介すると言い出し、親も周りが盛り上がるので乗せられるかのように娘をピアニストにという使命が生まれていったように感じます。

ただ、周りの盛り上がりに反して、私自身はただ単にピアノが好きなだけで、ピアニストを目指すことは一度も考えたことがありません。むしろ、学校で書く将来の夢にも、よくわからないけれど読書が好きだからという理由で「本屋さん」などと書いている小学生でした。
しかし、子供の希望を理解する大人は誰もいなく、周り全てが、この子は将来はピアニストになることが当たり前のように、子供である私の未来は作られていったように感じます。

そして調律師から紹介されたピアニストの先生のもとに面接へ行きました。
ここから、私のピアノ人生は大きく変化し、大きく歪み始めました。

有名なピアノの先生から受けた見た目の否定

ピアニストの先生の元へ弟子入りしたのは小学6年生の時でした。この先生は今でも有名な先生で、楽譜売り場に著書が並んでいるくらいの先生でもあります。
この先生に弟子入してからは毎週1人で先生の家へレッスンに通っていたのですが、親の知らないところで心が傷つくような出来事が沢山ありました。
特に私の見た目について言われる事が多く「あなたのような見た目の子は、ピアニストになるのは無理よ」とよく言われ、綺麗な服を着て親と一緒にレッスンに来ている子には見た目を沢山褒めていて、とにかく外見を非常に気にする先生でした。
私の家は毎週綺麗な服を着れるほど裕福ではなく、先生への高額なレッスン代だけでも親に負担をかけていました。だから見た目について言われる事は、暗に、あなたの家の金銭事情ではピアニストにはなれないと言われていると子供ながらに感じていました。

そして、中学1年生の春、ショパンコンクールに出場することになりました。
ショパンの練習曲の中から2曲の課題曲が選ばれ、1曲は小さな手の人が有利なA曲。もう1曲は手が大きい人のほうが有利なB曲。
コンクール開催日の少し前に、先生の紹介で更に有名な大先生に特別レッスンを受けることになり、20分で3万円のレッスンで高額だけど、ここでも私の親には断るという選択肢がなく、金銭的に無理をかけてしまいました。
このとき、一緒に大先生のレッスンを受けることになったお友達もいて、手の小さい私はA曲を指導してもらい、手の大きいお友達はB曲を指導してもらい、お互いのレッスンを見て勉強し、コンクール直前まで両方の曲を練習しました。

本番の当日、朝から先生の家へ行き、最後の練習をしていました。
その時に先生が言った決定的な無責任な一言のため、私は大失敗をすることになります。
先生の言った一言は

本番では1曲しか弾かないから、好きな方の曲を弾きなさい

中学1年になったばかりの幼い私は、「好きな方の曲」と言われて、単純に曲的にはB曲のほうが好きだったので、手の大きさは関係なしにB曲を選んでしまいました。

ショパンコンクールでの失敗とピアノ人生の終焉

ショパンコンクールでの失敗とピアノ人生の終焉

本番は手が大きい人に有利なB曲を選んでしまったがために平凡な演奏しかできず、結果が出せずに終了。
なぜ、あのとき先生は私に「好きな方の曲」という無責任な曲の選ばせ方をしたのだろう?大先生のレッスンではA曲だったのだから、当然、A曲で行きなさいと言うはず。なのに中学生とはいえ、まだまだ子供である私に好きな曲を弾けという投げやりなやり方をしてきたのは、自分で選ばせることでコンクールが上手くいかなくても自分が選んだ曲で自分の責任だから仕方ないと納得させる考えだったのだろうか。または、どちらの曲を選んでもコンクールで成績を収められるくらいでないとピアニストとしては失格だ、という意味だったのだろうか。それとも、好きな曲を選べと言えば、当然A曲を選ぶと考えたのだろうか・・・
どの理由にしても、中学1年生の生徒に寄り添って共に考えてくれたわけではなく、無責任な一言だったと思えて仕方ありません。

本番後に親が先生のところに挨拶へ行くと、普段は見せない笑顔で先生は私に大袈裟なハグをしてきた。
コンクール会場を後にする時、親が私に

どうしてA曲を弾かなかったの?

私はその時は親にどう返事をして良いかわからないままでしたが、大人になった今になってようやく伝えました

先生が好きな方の曲を弾きなさいと言ったから」と。

親は忘れている出来事だったけれど、私にとっては大人になった今だからこそモヤモヤせずにいられない出来事なのです。

あの子は必ずピアニストになると期待してきた関係者達が、先生に弟子入りしてあの子はどう変わったか?という関心を持ち注目しているのを、私はコンクール会場にいる時も肌で感じていました。しかし、コンクールで成果を上げられなかった後、そのプレッシャーのせいか身体を壊してしまい長期入院をすることになりました。
入院中、私は親から、
「身体が弱い子はピアニストにはなれないからね。退院したら先生に辞めるご挨拶に行くよ」と言われ、親の言う事を素直に受け止める子供だった私は、「そういうものなんだな」と思うだけで、ピアノを辞めてしまった。

しかし、今、大人になって思うのは

身体が治ったらまた再開すればよいだけの事だったのではないのか。
そもそもピアニストを目指しているかどうか、本人は決めていないではないのか。
ピアノが好きなだけでは、ピアノを習い続けることは叶わないのか。

大人になってから教えてくれた親の本音

子供だったとしても自分の意見は何もないの?と思われるかもしれないが、それまでずっとピアノが中心の人生だったから、テレビや漫画に時間を使うこともなく、自由時間の殆どはピアノを弾いて過ごしていた小学生時代。既に一生分のピアノを弾いたような感覚でした。そして、ピアノを辞める代わりにもっと他の様々な知らない世界へ向かって泳ぎだしたいような、そんな気持ちもあったと思います。子供ながらにピアノの世界の泥沼のような部分に触れてしまい、逃げ出したかったのかもしれません。

私の親は私が大人になってから本音を語っています。
あの先生は高飛車で人を見下す嫌な人だった」と。
私は「そう思ったのなら、私ならそんな人に自分の子をお願いしたりしないよ!?」と意見したのですが、
ピアノの世界の凄い人の言う事は『はいそうですか』と聞くしかなかった・・・」

私の親もピアノの世界の泥沼の中で必死に頑張っていたのだろうと思います。
ピアノ業界のことは何も知らず、分からない中で周りの意見に流されながらも、娘の為に出来ることを精一杯してくれて、感謝しかありません。
でも私はあの先生の元へ行くことになってしまったことだけは後悔している。自分ではどうしようもないことだったけれど。

ピアノ教室の先生・保護者・生徒である子どもたちに伝えたいこと

ピアノ教室の先生・保護者・生徒である子どもたちに伝えたいこと

ピアノの先生に限ったことではないのです、子供に寄り添う職業としてのピアノの先生へ言わせて頂きたいのは、ピアノの先生は、ただ単にピアノの弾き方を教えるだけのお仕事ではないということです。
一対一で子供と大人が接する時、子供は大人のことをよく見ています。
自分に対してどう接してくれているかを、五感や六感覚を通してしっかり感じとって、人と人が関わる時に大切なことをピアノの先生と過ごす時間にたくさん吸収しています。
子どもが大人に成長していく大切な時間の中に、大人の代表として関わらせてもらっているという自覚を持って子供と接して頂きたいです。私のように大人の軽い発言一つ、心が現れる目線一つで、その大人と接したその子供の一生に関わるような分岐点になることがあるのですから。

そして、これからピアノを子供に習わせようと考える親の皆様へは、ピアノの先生の中には幼い子供に責任を渡し、無責任な一言を言う先生も少なからずいます。
もし、そういった先生に出会ってしまったのなら、拒絶する勇気を持つことも大切です。ピアノの世界で見える大きな権力は権力ではなく、断りにくくしている雰囲気でしかない架空の権力です。
先生や周りが勝手に作り上げただけのもですので、「おかしい」「無責任じゃないか?」など、先生に対する疑念、子供の未来に対する不安があるのであれば、断ることや先生を替えるということも子供のためにおこなってください。

最後に、ピアノが大好きな子供達へ。
ピアノが好きなことは、あなたの才能です。
あなたの才能を大切にしてあげましょう。
ピアノを習うのであれば、自分と相性の合う、一緒にいて心地よい、信頼できる先生を見つけて、気持ちよく楽しみながら習いましょう。
人生は長いよ。だから先を急がず、ピアノが弾けることを宝物にしながら、色々なことを経験して大人になっていきましょうね。

以上、たくさん書きましたが、これらは私一個人から見た一つの側面ですので、先生側から見たときや楽器店側から見た時には全く違う出来ことと捉えられるかもしれません。
しかし本当のところはどうであれ、多方面から小さな私の成長を温かく見守って下さっていた方々へ深く感謝申し上げます。

※特定を避けるため、一部、いただいた情報を改変しています。

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