「子どもにピアノを習わせたいけど、マンションだし…電子ピアノで大丈夫?」
「電子ピアノで練習してても、ちゃんと上達するのかな?」
ピアノ教室に通い始めた保護者の方から、こんな相談をよく受けます。結論から言うと、電子ピアノでも上達はできます。ただし、目指すレベルによっては限界がある、というのが業界の本音です。
この記事では、電子ピアノと生ピアノの違いから、電子ピアノで上達できる”ライン”、さらには意外と知られていない「資産価値の差」まで、業界人の視点で正直にお伝えします。
【読了時間:約6分】
電子ピアノと生ピアノ、そもそも何が違うの?
まず基本から整理しましょう。見た目は似ていても、この2つはまったく別の楽器です。
音の出る仕組みが根本的に違う
生ピアノは、鍵盤を押すとハンマーが弦を叩き、その振動が響板に伝わって音が出ます。弦の振動だけでなく、ピアノ全体が共鳴して豊かな音色を生み出す仕組みです。
一方、電子ピアノは、鍵盤を押した信号をセンサーが読み取り、あらかじめ録音された音(または計算で作られた音)をスピーカーから流します。つまり、鍵盤は「音を出すスイッチ」なんです。
この根本的な違いが、すべての差につながっています。
タッチ(鍵盤の重さ)の差は想像以上に大きい
生ピアノは、低音ほど重く、高音ほど軽い自然な重さがあります。さらに、弾く強さで音量だけでなく音色まで変わります。この「弾いた感触が音にダイレクトに反映される感覚」が、表現力を育てるんです。
電子ピアノも、上位機種になるほど生ピアノのタッチに近づいていますが、完全に再現できているわけではありません。特に、連打の速さや、指先の微妙なニュアンスを音に変える力は、やはり生ピアノに軍配が上がります。
教室で「あれ、家では弾けたのに…」という子がいたら、まずタッチの違いを疑います。
グランドピアノとアップライトピアノの違いも知っておこう
生ピアノには、大きく分けて2種類あります。
グランドピアノは、弦が水平に張られていて、音の響きや表現力が最も豊か。プロやコンクールを目指すなら、グランドピアノでの練習が理想です。ただし、価格は新品で200万円〜、中古でも70万円〜と高額。
アップライトピアノは、弦が縦に張られていて省スペース。新品で70万円前後、中古なら25万円〜購入できます。一般家庭で「生ピアノ」というと、ほとんどがこちらです。
音の豊かさではグランドピアノに劣りますが、それでも電子ピアノとは比較にならないほど表現力があります。
「電子ピアノで練習しても上達する?」への業界人の本音

結論:趣味レベルなら十分、音大・コンクールを目指すなら厳しい
率直に言います。
楽しく弾ければいい、ブルグミュラー程度まで弾ければ満足という趣味レベルなら、電子ピアノでも十分上達できます。むしろ、音量を気にせず練習できる分、練習時間を確保しやすいメリットがあります。
でも、音大受験やコンクール入賞を目指すなら、電子ピアノだけでは限界があります。理由は、タッチと音色の違いです。
ある生徒さんは、家では電子ピアノで練習していて、教室のグランドピアノではいつも緊張していました。「家で弾けてるのに、ここでは弾けない」って。それ、楽器が違うからなんです。
電子ピアノで上達できる”ライン”はどこまで?
目安として、こんな感じです。
- バイエル〜ブルグミュラー前半:電子ピアノでOK
- ブルグミュラー後半〜ソナチネ:生ピアノがあったほうが良い
- ソナタ以上、コンクール出場:生ピアノ必須
もちろん個人差はありますが、ソナチネくらいから、強弱や音色のコントロールが求められるようになります。ここで電子ピアノと生ピアノの差が、はっきり出てきます。
また、発表会やコンクールは生ピアノで弾くので、普段から生ピアノで練習していないと本番で戸惑います。これ、本当に多いんです。
電子ピアノのメリット・デメリットを正直に比較
電子ピアノの3つのメリット(価格・音量・メンテナンス)
1. 価格が手頃 新品で5万円〜30万円と、生ピアノ(新品アップライトで70万円〜)に比べて圧倒的に安い。初期投資を抑えたい家庭には魅力的です。
2. 音量調節・ヘッドホン使用ができる これが最大のメリット。マンションやアパートでも、夜間でも気兼ねなく練習できます。近所トラブルを避けたいなら、電子ピアノ一択です。
3. 調律不要、メンテナンスが楽 生ピアノは年1〜2回の調律(1回1〜2万円)が必要ですが、電子ピアノは不要。維持費は電気代のみです。
電子ピアノの3つのデメリット(表現力・タッチ・買い替え問題)
1. 表現力に限界がある どんなに高級な電子ピアノでも、生ピアノの複雑な共鳴や音色の変化を完全には再現できません。
2. タッチが生ピアノと違う 先ほども触れましたが、教室や本番で生ピアノを弾くと、タッチの違いに戸惑います。
3. 買い替えが必要になる 電子ピアノの寿命は10〜20年。電子機器なので、古くなると音が出なくなったり、鍵盤が反応しなくなったりします。
ここが、次の「資産価値の違い」に直結します。
見落としがちな「資産価値」の違い~売るときに差がつく

購入時、多くの人が気にするのは「初期費用」ですよね。でも、実は売却時の価値も重要なんです。
生ピアノは20年後でも売れる、電子ピアノは10年でほぼゼロ
電子ピアノは、電子機器のため、製造から年数が経つほど買取価格は急激に下がります。10年を超えるとほぼ値段がつかず、処分費用がかかることも。
一方、**生ピアノ(アップライト)**は、ヤマハ・カワイなら20年前のモデルでも10万円〜20万円で買い取ってもらえます。30年以上前でも、状態が良ければ価値があります。
例えば、70万円で新品アップライトを買って20年使った後、15万円で売却できれば、実質負担は55万円。電子ピアノを20万円で買って20年後に処分費3万円かかれば、実質負担は23万円。
一見、電子ピアノのほうが安いですが、途中で買い替えが必要になることを忘れてはいけません。電子ピアノを2回買い替えたら、40万円以上かかります。
近年の価格高騰で、中古ピアノ市場が底堅く推移
さらに、ここ数年、生ピアノの価格が上がっています。
理由は、木材価格の高騰(ウッドショック)、円安、物流費の増加です。新品ピアノの値上げに伴い、中古市場も底堅く推移しています。
興味深いのは、60〜70年代に国内生産された中古ピアノが「新品より品質が高い」と再評価されていること。当時は職人が手作りしていたため、現在の海外委託生産品より良質なんです。
つまり、生ピアノは「消えモノ」ではなく、ある種の資産として考えることができます。電子ピアノにはない、大きな価値です。
マンション・アパート住まいの救世主?ハイブリッド型電子ピアノという選択肢

「生ピアノが良いのはわかったけど、マンションだから音が…」という方に朗報です。
ヤマハ「AvantGrand」など、ハンマー搭載モデルの実力
ハイブリッド型電子ピアノというジャンルがあります。代表的なのが、ヤマハの「AvantGrand(アバングランド)」シリーズ。
これ、何がすごいかというと、生ピアノと同じハンマーアクションが入っているんです。鍵盤を押すとハンマーが動き、そのタッチ感は生ピアノにかなり近い。ただし音は電子的に出すので、ヘッドホンも使えます。
「生ピアノのタッチで、電子ピアノの音量調節機能」という、いいとこ取りです。
価格は高いけど、生ピアノに限りなく近づける
ただし、価格は40万円〜100万円以上と、普通の電子ピアノよりずっと高い。新品アップライトピアノと同じか、それ以上の値段です。
でも、マンション住まいで「どうしても生ピアノに近い環境で練習したい」という方には、検討の価値あり。特に、音大受験を考えているけど防音室が作れない、という家庭には救世主になるかもしれません。
結局、電子ピアノと生ピアノどっちを買うべき?判断基準3つ
①子供の目標レベル
趣味で楽しく弾ければOK → 電子ピアノで十分
ソナタ以上、コンクール出場、音大受験を視野に → 生ピアノが必須
ただし、最初は電子ピアノでスタートして、本人が本気になったら生ピアノに買い替え、という選択肢もあります。
②住環境と予算
マンション・アパートで防音対策できない → 電子ピアノ or ハイブリッド型
戸建て、または防音対策ができる → 生ピアノも検討可能
予算も重要です。初期費用を抑えたいなら電子ピアノ、長期的な視点で考えるなら中古の生ピアノも選択肢に入ります。
③将来的な買い替え・売却計画
ここが意外と見落としがちなポイント。
電子ピアノは、10年後に買い替えが必要になる可能性大。売却時の価値はほぼゼロ。
生ピアノは、20〜30年使えて、売却時にもある程度の価値が残る。
「10年後、引っ越すかもしれない」「子どもが続けるかわからない」という場合、売却できる生ピアノのほうが、トータルで見ると損しない可能性もあります。
まとめ
電子ピアノと生ピアノ、どちらを選ぶかは、目標・住環境・予算・将来設計次第です。
電子ピアノは、音量調節できて手頃な価格が魅力。趣味レベルなら十分です。でも、本格的に上達を目指すなら、どこかで生ピアノが必要になります。
そして、忘れてはいけないのが資産価値の違い。生ピアノは20年後でも売れる、電子ピアノは10年でほぼゼロ。この差、意外と大きいですよ。
マンション住まいで諦めていた方も、ハイブリッド型という選択肢があります。少し高いけど、本気で取り組むなら検討の価値あり。
大事なのは、今の状況だけでなく、5年後、10年後も見据えて選ぶこと。ピアノは長く使うものだからこそ、後悔しない選択をしてくださいね。
あなたのご家庭にぴったりの一台が見つかりますように。