ピアノ教室の準備をしていたはずの子どもが、ある日ふっと「行きたくない」と言う。そこに「先生が合わないのかも」という言葉が重なると、親の頭の中は一気に忙しくなります。失礼にならないか、甘やかしになるのではないか、続けるべきか。考えれば考えるほど、家の空気だけが重くなることもあります。
すぐに答えを出さなくても大丈夫だと思います。まずは子どもの気持ちを否定せず、先生を責める方向にも寄せず、状況をほどいて見える形にしていく。それだけで、次に取る行動が少しだけ選びやすくなります。
「子どもの言葉は、そのまま鵜呑みにしない」

小学生の「行きたくない」は、理由がはっきりしているときもあれば、本人にもまだ言葉になっていないときもあります。だから最初から「何があったの」と詰めるより、「そう感じたんだね」と一度受け止めたほうが、話の入口が作りやすい場合があります。
その日の気分の波なのか、何週か続く流れなのかは、少し時間を置かないと見えません。焦って結論を急ぐと、子どもは「自分の一言で家がピリついた」と覚えてしまい、次から言いにくくなることもあります。
一度だけの「休みたい」と、毎週のように出る「行きたくない」は、同じ言葉でも重さが違うことがあります。親がやることは、正しい理由を引き出すことより、様子を見ながら言葉が出る環境を整えることだと思います。
「ピアノ教室の先生が合わないと感じたとき、親が先に見る三つのこと」
相性の話は、誰かの善し悪しとは別物です。たとえば靴のサイズが少し合わないだけで、歩くたびに足が痛くなりますが、靴が悪いわけでも足が悪いわけでもなく、ただ合っていないだけ、ということがあります。先生との相性も、似たような“噛み合わせ”の問題として捉えると、必要以上に罪悪感を抱えずに済むと思います。
整理は難しくしなくて大丈夫です。まず「いつから様子が変わったか」「行く前と帰った後で何が起きているか」「先生以外の要因が重なっていないか」。この三つを、メモ程度に並べるだけでも気持ちが落ち着きます。
たとえば、学校行事が続いて疲れている、宿題が重い、寝不足が続いている。発表会が近い、曲が難しくなった、練習が追いつかなくなった。こうした重なりだけで、教室そのものがツラく見えてしまう場合もあります。
「ピアノ教室に行きたくない」の中身は、だいたい混ざっている

理由はひとつに見えて、実際は混ざっていることが多いです。注意されるのが怖い、間違えると恥ずかしい、進むスピードが速くて置いていかれる気がする。あるいは、先生の声の大きさや距離感が緊張につながっている、ということもあります。
聞き方は、白黒で迫らないほうが言葉が出やすいです。「先生が嫌い?」と聞くと、子どもは“相手を悪者にする答え”を求められているように感じる場合があります。そういうときは、こういう聞き方が助けになることがあります。
「レッスンの中で、いちばんツラかったのはどこ?」
それでも言葉が出ない子もいます。そのときは帰宅直後を避けて、夕飯のあとや寝る前など、落ち着く時間に短く聞くほうが合う場合もあります。無理に答えを出させるより、答えやすい形を探していくほうが、親子ともに消耗しにくいと思います。
子どもが言葉にできるのは、出来事そのものより「体がどうなったか」「心がどうなったか」という感覚のほうが先、という場合もあります。「レッスンの途中でお腹が痛くなった」「帰り道に泣きたくなった」などが出てきたら、そこがヒントになります。
「ピアノの先生に伝える前に、家でできる小さな調整」
先生に相談する前に、家庭側でできる調整を少しだけ試すと、原因の輪郭が見えやすくなります。練習を「毎日五分」に下げて、できたらそれで終わりにする。レッスン前日は早めに寝て、当日の機嫌や集中が落ちにくい状態を作る。こうした小さな調整で楽になるなら、相性というより生活の詰まりが主因だった可能性もあります。
ここで親が教え込みすぎると、親子の空気が荒れやすいので注意が必要です。上達を取り戻すより、ピアノそのものを嫌いにしないことを守る。いったんそう割り切るほうが、結果的に続きやすい場合もあります。
「練習しなさい」で押すより、「今日は指一本だけでも触れたら合格」にする。そんな日があってもいいと思います。親が“守る目標”を変えると、子どもの表情がふっと軽くなることがあります。
「ピアノの先生への伝え方は、評価より状況で」
先生への連絡は、結論を言い切る場というより、状況を共有する場として捉えると角が立ちにくいです。「最近、レッスン前になると緊張が強くて行きたがらない日が増えました」「家でも練習が止まってしまっていて、いまの進め方を少し見直したいです」。このくらいの温度なら、先生の側も受け止めやすいと思います。
話すタイミングは、レッスンの直前直後に無理に詰め込まなくても大丈夫です。「少し相談したいことがあります」と一言添えて、別のタイミングを作るのも自然です。対面が難しければ、教室の連絡手段に合わせて短く伝えるだけでも、最初の一歩になります。
先生に「では宿題を減らしましょう」「曲の選び方を変えましょう」と提案をもらえることもありますし、「少し様子を見ましょう」で落ち着く場合もあります。大事なのは、親がその場で正解を決めようとしないことだと思います。
「ピアノの先生から尊重されないと感じたら、環境を変える選択肢もある」

丁寧に伝えても話を聞いてもらえない、責められるような言葉が続く、子どもが萎縮してしまう。そうした状態が続くなら、相性の問題として環境を変える選択肢に触れていいと思います。先生にも方針や時間の制約がある一方で、家庭の事情や子どもの気持ちが置き去りになるほど我慢を重ねると、ピアノが嫌いになってしまう場合があります。
とくに、レッスンの話題だけで強い不安が出たり、体調が崩れたりする様子が続くなら、無理に押し切らないほうがいいと思います。迷うときは、学校や身近な相談先に一度話してみるだけでも、親の気持ちが整いやすくなります。
子どもの言葉を受け止めつつ、親が背負いすぎない形に整えていけば、落ち着く道は見つかると思います。
次回は、先生を変えると決めたときに揉めにくく区切る方法と、子どもの心が折れにくい移り方を書きます。
>「ピアノ教室の先生を変更すると決めたら…揉めにくい辞め方と次の選び方 第2回(全2回)」