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ヤマハ音楽教室はこの20年でどう変わったのか?生徒数のピークと今を数字で見る

ヤマハ音楽教室はこの20年で何が変わったか-ONFAN

~ピアノの先生が知っておきたい、生徒数と経営のリアル

「ヤマハ音楽教室って、昔はもっとすごかった気がする」

ピアノの先生と話していると、こんな言葉を聞くことがあります。
子どもの頃、周りの友達の多くがヤマハに通っていた。発表会も大きく、教室の存在感も今よりずっと大きかった。そんな印象を持っている人は少なくないと思います。

では実際のところ、ヤマハ音楽教室はこの20〜30年でどう変わったのでしょうか。感覚ではなく、できるだけ数字を見ながら整理してみたいと思います。

「ヤマハ音楽教室のピークはいつだったのか」

ヤマハの公開資料を追っていくと、2000年代後半がもっとも規模が大きかった時期だと考えられます。2009年前後の資料では、国内の生徒数が約53万人、海外が約18万人、合計するとおよそ71万人という数字が確認できます。

世界で70万人以上が通う音楽教室というのは、教育事業として見てもかなり大きな規模です。この頃のヤマハは、日本国内でもまだ人数を増やす力が残っていて、子ども向けのコースも大人のコースも同時に拡大していました。実際、2000年代半ばの資料には「大人の音楽レッスンが10万人を超えた」という記述もあり、教室の対象が子どもだけではなく広がり始めた時期でもありました。

ところが、その後は少しずつ状況が変わっていきます。

「現在の生徒数はどのくらいなのか」

最近の数字として確認できるものでは、2025年時点で国内の生徒数が約29万9千人、海外が約15万4千人ほどになっています。合計すると、およそ45万人です。

ピーク時の約71万人と比べると、全体ではおよそ3分の2ほどの規模になっています。特に国内の減少が大きく、国内だけで見ると約44%ほど減っている計算になります。

この数字だけを見ると、「ヤマハ音楽教室は弱くなったのでは」と感じるかもしれません。ただ、もう少し丁寧に見ると、少し違う景色も見えてきます。

「減っているのはほとんど日本」

実は、海外の生徒数はそれほど大きく減っていません。2009年前後は約18万人でしたが、現在も15万人ほどを維持しています。多少の上下はあるものの、日本ほど急激に減っているわけではありません。

つまり、ヤマハ音楽教室の規模が小さく見える理由の多くは、日本国内の生徒数が減っていることにあります。逆に言えば、海外ではいまでも一定の規模を保ち続けているということです。

ヤマハの資料を見ても、ここ10年ほどは海外市場の音楽教育を強化する方針が繰り返し書かれています。アジアを中心に音楽教室を展開し、将来の音楽人口を育てるという考え方です。昔のヤマハは日本の音楽教育を広げる存在でしたが、今は世界の音楽教育に少しずつ軸を移している途中なのかもしれません。

「なぜ日本では生徒が減ったのか」

国内の生徒数が減った理由はいくつか考えられますが、まず大きいのはやはり少子化です。30年前と比べると、子どもの人口はかなり減っています。これはどの習い事にも共通する問題です。

もう一つは、習い事の種類が増えたことだと思います。昔の習い事といえば、ピアノ、そろばん、習字といった定番がありました。ところが今は、ダンスやスポーツ、英語、プログラミングなど、選択肢がかなり広がっています。家庭の中で、子どもにかける習い事が分散している面はあると思います。

さらに、個人のピアノ教室が増えたことも影響しているかもしれません。以前は「ピアノを習うならヤマハかカワイ」という地域も多かったのですが、今は自宅教室や小規模の教室が増え、学び方の選択肢が広がりました。結果として、生徒がいろいろな場所に分散している可能性があります。

「ヤマハという会社の中での位置づけ」

ここは意外に思う人もいるかもしれませんが、ヤマハという会社全体で見ると、音楽教室の売上はそれほど大きな割合ではありません。

ヤマハの売上は約4600億円規模ですが、その中で音楽教室関連の事業は160億円ほどとされています。割合で言うと、会社全体の数%程度です。もちろん大切な事業ではありますが、会社の売上の中心は楽器や音響機器などの製品です。

それでもヤマハが音楽教室を長く続けているのは、少し違う役割があるからだと言われています。

「音楽教室は“音楽人口を育てる場所”」

ヤマハの資料には、音楽教室について「将来の音楽市場を育てる役割がある」と書かれていることがあります。つまり、単にレッスン料で利益を出すだけの事業ではなく、音楽に触れる入口としての意味が大きいという考え方です。

子どもが音楽教室で音楽に触れる。
その経験が、将来の楽器購入や音楽活動につながる。

そういう長い流れの中で、音楽教室が存在しているという見方です。

「コロナの影響とその後」

最近の動きとしては、2020年のコロナの影響も無視できません。多くの教室が休講になり、生徒数は大きく減りました。国内28万人、海外8万人台まで落ちた時期もあります。

その後はオンラインレッスンなどを取り入れながら、海外を中心に回復しています。現在の45万人という数字は、コロナ後としては持ち直した状態と言えそうです。

「ヤマハ音楽教室の今の姿」

数字だけを見ると、ヤマハ音楽教室はピークより小さくなっています。これは事実です。ただ、その理由は単純な「弱体化」だけではないと思います。

日本では子どもの人口が減り、習い事の形も変わりました。一方でヤマハは海外展開を進め、音楽教育の役割を広げています。さらに近年はオンラインやシニア向けのレッスンなど、新しい形の音楽教育にも取り組んでいます。

2024年には教室の名称も「YAMAHA MUSIC SCHOOL」に変更されました。世界展開を意識したブランドに少しずつ変えているようにも見えます。

昔のヤマハ音楽教室は、日本で大量の生徒を集める大きな教育ネットワークでした。
今のヤマハ音楽教室は、世界中で音楽の入口を作る仕組みに変わりつつある。

数字を追っていくと、そんな姿が見えてくるように思います。

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InouAyu

InouAyu

ベテラン生徒

フリーライターとして各Webメディアで執筆中。 4歳から音楽教室に通い続け、生徒歴20年を超えるベテラン音楽教室生徒の視点でONFAN.で記事を執筆。

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