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子供30年で半減、ピアノ講師が稼げない理由

子供30年で半減、ピアノ講師が稼げない理由 ONFAN.

「音大出ればピアノの先生になれる」——そう思ってた人、現実は違います。

私の周りにも音大卒のピアノ講師がたくさんいますが、正直に言います。大半が「これだけじゃ生活できない」って副業してます。週3でコンビニバイト、夫の扶養内で働く、実家暮らしで何とか——そんな話ばかり。

なぜこんなことになったのか。答えは簡単です。音大卒は増えたのに、習う子供は激減した。需要と供給が完全に逆転したんです。

今日は、文部科学省や総務省の公的データを使って、「ピアノ講師が稼げない現実」を数字で証明します。そして、それでも「ピアノ講師として生き残る」道と、音大卒が活躍できる意外な一般企業への道も提案します。

業界の人間だからこそ言える、リアルな話です。


音楽大学卒業者は増え続けている現実

まずは音楽大学の卒業者数から見ていきましょう。

文部科学省データが示す30年間の推移

文部科学省の「学校基本調査」によると、平成31年(2019年)3月に音楽大学を卒業した学生は3,526人でした。

「え、意外と少ない?」と思った方、甘いです。

これ、30年前の1990年代と比べると実は30%も減ってるんです。1990年代は毎年5,000人を超える音大卒業生がいました。

でも、ここからが本題。減ったとはいえ、毎年3,500人もの音大卒がピアノ講師市場に参入してるんです。これが30年続けば、単純計算で10万人以上。

なぜ音大卒が減っても供給過多なのか

音大卒業者数自体は減ってます。でも、それ以上に「習う子供」が激減してるから問題なんです。

それに、ピアノ講師って「引退」がないんですよ。60代、70代でも現役で教えてる先生はゴロゴロいます。つまり、新しく音大を出た若手講師は、何十年もキャリアを積んだベテラン講師と生徒の奪い合いをしなきゃいけない

しかも大学全入時代で、音楽系学部・学科は一般大学にも増えました。教育学部の音楽コース、芸術学部の音楽学科——こういう卒業生も「ピアノ教えられます」って市場に入ってきます。

供給は減ってない。むしろ「教えられる人」は溢れてるんです。


でも、習う子供は30年で半分以下に

次は需要側、つまり「習う子供」のデータです。

でも、ピアノを習う子供は30年で半分以下に-ONFAN.

総務省「人口推計」が示す子供人口の激減

総務省統計局の「人口推計」によると、2020年4月時点で15歳未満の子供の数は1,512万人

これ、1990年と比較するとどうなるか。約半分です

1990年代前半、日本には約2,200万人の15歳未満の子供がいました。それが30年で700万人近く減ったんです。しかも、1982年から39年連続で減少中

「少子化は知ってたけど、そんなに?」って思いますよね。私も改めて数字見て驚きました。

少子化だけじゃない、習い事の多様化問題

さらに追い打ちをかけるのが、習い事の多様化

昔は「女の子の習い事=ピアノ」みたいな時代がありました。でも今は違います。プログラミング、英会話、ダンス、体操、サッカー、水泳——選択肢が爆発的に増えてます。

しかも共働き家庭が増えて、「平日の夕方にピアノ教室に通わせる余裕がない」という家庭も増加。オンライン習い事も台頭してきて、わざわざ対面でピアノ教室に通う必然性も薄れてます。

つまり、子供の絶対数が減った上に、ピアノを選ぶ割合も減ってる。ダブルパンチです。


需要と供給が完全に逆転した結果

ここまでのデータを整理すると、こうなります。

単純計算:講師1人あたりの生徒数はどうなった?

1990年代:

  • 音大卒業者:年間5,000人以上
  • 子供人口:約2,200万人
  • ピアノ習う子供を仮に10%とすると:220万人

2020年代:

  • 音大卒業者:年間3,500人
  • 子供人口:約1,500万人
  • ピアノ習う子供を仮に5%とすると:75万人

1990年代は講師1人あたり440人の「潜在顧客」がいたのに、2020年代は214人。半分以下です。

しかも、これ「引退しない講師」を計算に入れてません。実際には、30年分の卒業生が全員市場に残ってるとしたら、もっと悲惨な数字になります。

実際のピアノ講師の年収を見てみる

理論だけじゃなく、実際の年収データを見ましょう。

厚生労働省「令和5年度賃金構造基本統計調査」によると、ピアノ講師(音楽教室講師)の平均年収は約415万円(37.9歳)

「え、それなら普通じゃん」と思った方、これには大きな落とし穴があります。

このデータはサンプル数が極めて少ないんです。しかも、正社員や大手音楽教室の契約講師のみが対象。個人で自宅教室を開いてる講師や、業務委託の非常勤講師は含まれてません。


「稼げないピアノ講師」のリアルな実態

「稼げないピアノ講師」のリアルな実態-ONFAN.

実態はもっと厳しい。複数の求人サイトや音楽教室関係者へのヒアリングから見えてくる、本当の数字がこちらです。

厚労省データから見る音楽教室講師の平均年収

先ほどの415万円は「恵まれた一部」の数字。実際には——

雇われ講師(音楽教室で業務委託):

  • 新人:年収120万円〜144万円
  • 中堅:年収150万円〜180万円
  • ベテラン:年収252万円〜302万円

これ、「生徒数十人を抱えてフルで働いた場合」の想定です。

求人サイトの給与相場が物語る厳しさ

都内の音楽教室で業務委託契約を結んだ場合、時給1,300円〜1,600円が相場。

「時給1,500円なら悪くないじゃん」?

違います。これ、実際にレッスンしてる時間だけの給料です。

  • レッスン準備の時間
  • 発表会の企画・運営
  • 保護者対応
  • 移動時間

これ全部、無給です。

しかも大手音楽教室と契約する場合、月謝の40%〜60%を中間手数料として抜かれます。月謝1万円の生徒を30人抱えても、手元に残るのは月12万円〜18万円。年収にして144万円〜216万円。

これじゃ一人暮らしもできません。音楽だけで生活するのは、正直厳しいんです。

副業必須、扶養内で働く講師たち

だから現実はこうなります。

パターン1:夫の扶養内で働く → 年収103万円以内に調整。週2〜3日、午後だけ教える。

パターン2:副業しながら → 平日昼間は事務のパート、夕方と週末だけピアノ講師。

パターン3:実家暮らし → 家賃・生活費は親頼み。ピアノ講師の収入は小遣い程度。

これが、音大出て「好きなことを仕事にした」人たちのリアルです。


それでも「ピアノ講師として生き残る」3つの戦略

ここまで読んで絶望した人、ちょっと待ってください。

「稼げないのが当たり前」の業界だからこそ、戦略を持てば生き残れるんです。

それでも「ピアノ講師として生き残る」3つの戦略-ONFAN.

①専門特化型:ターゲットを絞って差別化する

「何でも教えます」は、もう通用しません。ただし、地域によって戦略は変わります

幼児専門(リトミック+ピアノ)に特化 → 幼児教育への関心が高まってるので、「情操教育」を前面に出せば富裕層にアプローチできます。特に高級住宅街近辺では有効な戦略。

大人のピアノ教室(都市部限定) → 少子化でも、大人の習い事需要は増えてます。ただし、これは都市部だけの話。地方では大人の生徒数自体が限られるので、特化は危険です。

注意:音大受験指導は時間がかかる → 単価は高い(1回60分で5,000円〜1万円)けど、そのレベルの指導ができるようになるまで年月がかかります。新人講師がいきなり目指すのは現実的じゃありません。

地方では「何でも教えられる」が武器 → 幼児から大人まで、クラシックからポップスまで対応できる柔軟性のほうが、地方では生徒を集めやすいんです。

②高い「生徒募集力」と「報酬率」がある音楽教室に所属する

大手音楽教室も選択肢の一つですが、実態を知っておく必要があります。

大手音楽教室の現実:

  • 確かに集客はしてくれる
  • でも所属講師が多いので、一人あたりの生徒数は少ない
  • 給与体系は細かく決まってるけど、結局は報酬率が低い(40%〜60%を中間手数料として引かれる)
  • 講師採用自体が狭き門(教室数が減ってる)

小規模教室のリスク:

  • 給与体系が不透明なところもある
  • 教室が突然閉鎖するリスク
  • 講師研修制度が整ってない

理想:生徒募集力が高く、報酬率も良い音楽教室 → こういう教室を見つけられれば、集客の心配なく、しっかり収入も得られます。ただし数は少ない。

③最初から個人教室を立ち上げる+YouTubeで独学

「まずは大手で経験を積んでから独立」——これ、今の時代には古い考え方です。

今の時代の正解:

  • 最初から個人教室を立ち上げる
  • YouTubeやオンライン講座で講師ノウハウを学ぶ(無料でいくらでもある)
  • SNSで集客する
  • 小さく始めて、生徒が増えたら拡大

理由:

  • 大手に入っても、昔のように大量の生徒がつくわけじゃない
  • 中間手数料を取られ続けるより、最初から月謝を全額もらったほうが効率的
  • 失敗しても、個人なら軌道修正が早い

④複数収入源を持つ:「複業」思考が生き残りの鍵

ピアノ講師一本で勝負するのは、もうリスクが高すぎます。**複業(パラレルキャリア)**を前提に考えましょう。

YouTubeで集客+広告収入 → 「〇〇市のピアノ教室」ではなく、「〇〇先生のピアノチャンネル」でファンを作る。広告収入も入るし、遠方からオンラインレッスンの申し込みも来る。

オリジナル教材を販売 → noteやBASEで楽譜や練習ガイドを販売。一度作れば不労所得。

オンラインレッスン併用 → 対面は週末だけ、平日はオンライン。移動時間ゼロで効率アップ。

音楽感性を活かしたクリエイティブな仕事 → 動画編集、BGM制作、イベント企画、音楽療法など、「ピアノ講師」の枠を超えた仕事。

教育事業 → ピアノだけじゃなく、子供向けのプログラミング教室や英会話教室とのコラボ。音楽教育と組み合わせて差別化。

重要なのは「ピアノ講師一択」じゃなく、音楽を軸にした複数の収入源を育てること


一般企業に就職した音大卒が意外と強い理由

「ピアノ講師では食えない」と分かった時、次の選択肢は一般企業です。

実は、音大卒って一般企業でも評価されるんですよ。

音大卒が一般企業で評価される3つのスキル

①継続力・諦めない心

毎日何時間もピアノの前に座って練習してきた経験。これ、企業から見ると**「困難に直面しても諦めない人材」**なんです。

営業で断られ続けても諦めない、困難なプロジェクトでも投げ出さない——音大生はメンタルが強い

②プレゼン力・度胸

人前で演奏してきた経験は、プレゼンや営業での度胸に直結します。

失敗しても立て直す力、緊張してもパフォーマンスを出す力——これ、ビジネスでめちゃくちゃ重宝されます。

③マルチタスク能力

譜読み、テクニック、表現——ピアノ演奏って実は超高度なマルチタスクなんです。

複数の案件を並行で進める仕事、細かい作業とクリエイティブな思考を同時にやる仕事——音大卒は強い。

④高度なコミュニケーション能力(への期待)

アンサンブル経験者は、「相手の出方を見て合わせる」能力が高い人が多い。これ、チームワークが求められる職場では重宝されます。

さらに、小さい頃からピアノの先生という大人と1対1で向き合ってきた経験。

目上の人との会話、指摘を素直に受け入れる姿勢、自分の意見を伝える力——音大生全員がこれを身につけているわけではありませんが、企業側からは「先生と長年向き合ってきた経験がある人材」として期待されるんです。

実際にコミュ力が高いかどうかは個人差がありますが、「音大出身=先生とのコミュニケーション訓練を受けてきた人」という見方をされること自体が、就活では有利に働きます。

実際に音大卒が活躍している業界・職種

国立音楽大学の2024年度データによると、就職者のうち約6割が一般企業・団体に就職してます。

具体的にはこんな業界:

教育業界(音楽教育じゃなく一般の塾・教育系企業) → 子供に教える経験が活きる

サービス業(接客・ホスピタリティ系) → 人前でのパフォーマンス経験が評価される

事務・総務(コツコツ系の仕事) → 継続力と正確さが求められる仕事にマッチ

営業職(意外と度胸が活きる) → 人前で緊張しない、失敗を恐れない姿勢が武器に

IT・Web業界(クリエイティブ職、デザイナー、動画編集など) → 音楽制作で培った感性とソフトウェア操作能力が活きる

「ピアノしかやってこなかった」は武器になる——早めの方向転換が勝ち組

音大生って、よくこう言うんです。

「音楽しかやってこなかったから就職できない」

違います。

企業の人事担当者に聞いたら、こう言ってました。

「一つのことを10年以上続けた経験がある人材は貴重」 「コンクールで結果出せなくても、挑戦し続けた事実が評価できる」

つまり、音大での経験はポータブルスキルなんです。

ピアノを売りにするんじゃなくて、ピアノで培った能力を売る

履歴書に「ピアノ歴15年」じゃなくて、**「目標達成のために毎日5時間の自主練習を継続し、全国コンクール出場。プレゼン力・継続力・計画性を習得」**って書くんです。

でも、ここからが重要。

音大卒=音楽の道しか考えない、という固定観念を早めに捨てたほうが勝ち組になれます。

在学中から一般企業就職を視野に入れる 卒業後すぐに独立する選択肢も考える ピアノ講師一択じゃなく、複業を前提にキャリアを設計する

「ピアノ講師で稼げるようになるまで頑張る」って何年も迷ってるうちに、20代後半、30代になって身動き取れなくなる——これが一番危険なパターンです。

早い段階で**「音楽を軸にした複業キャリア」**を意識して動き出した人が、結果的にピアノも続けられるし、経済的にも安定してるんです。


まとめ:「好き」だけでは稼げない時代。でも、戦略と複業思考があれば道は開ける。

最後にもう一度、データで整理します。

【厳しい現実】

  • 音大卒業者:毎年3,500人(30年で10万人以上が市場に)
  • 子供人口:30年で半減(1990年代2,200万人→2020年代1,500万人)
  • ピアノ講師の平均年収:150万円〜300万円(業務委託の場合)
  • 講師1人あたりの潜在顧客:半分以下に

【それでも生き残る道】

  • ターゲット特化:幼児専門(高級住宅街)、大人専門(都市部のみ)。地方は柔軟性重視。
  • 良質な音楽教室を選ぶ:生徒募集力と報酬率の両方を見極める
  • 最初から独立+YouTube学習:「大手で経験を積む」は古い。小さく始めて軌道修正しながら育てる
  • 複業思考:ピアノ講師一本じゃなく、YouTube・教材販売・クリエイティブ・教育事業など複数の収入源を育てる
  • 早めの方向転換:一般企業就職や複業キャリアを在学中から意識する

音大に行ったこと、ピアノを続けてきたことは、決して無駄じゃありません。

でも、「好き」だけじゃ稼げない時代になったのも事実。

戦略を持ち、複業思考で動けば、音楽を軸にしたキャリアはまだ築ける。

この記事が、音大を目指してる人、今ピアノ講師として苦しんでる人、進路に迷ってる音大生の役に立てば嬉しいです。


【出典】

  • 記事を書いたライター
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音葉

音葉

音楽教室ウォッチャー

音楽教室業界に関わって10年以上。楽器店での販売・教室運営サポートを経験し、現在はフリーライターとして活動中。 業界の内側を知っているからこそ書ける「誰も教えてくれなかった話」をモットーに、保護者が本当に知りたい情報、先生が言いにくい本音を発信しています。 自身も4歳からピアノを習い、今は小学生の子どもを音楽教室に通わせる"現役の保護者"。親として感じる疑問や不安も、記事に反映させています。 好きな作曲家はドビュッシー。子どもの発表会では毎回キャパ超えで号泣する、ごく普通の音楽好きな親です。

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